電車やバスに乗れなくなった(パニック障害)

パニック障害イメージ

パニック障害の発端は明らかな理由なく、ある日を境に乗り物や大勢の人の中にいると動悸や息切れなどを起こし、このままでは死んでしまうのではないかと恐怖を覚えることから始まります。内科などで身体に問題ないと言われて心療内科や精神科を受診されるケースが非常に多いです。

このため、生命の危険はなくてもご本人が辛い思いをされてきたことを充分に受け止めてさしあげることが何よりも重要です。症状が続く場合には、少量の抗うつ薬と場合によって抗不安薬が有効です。

同時に段階的エクスポージャーと呼ばれる、徐々に怖さを感じる場面に身体を馴らしていく治療が勧められます。これは実験心理学で学習の研究から臨床応用された、こころの世界では珍しい系統だった治療法(行動療法)です。

例として、あなたが中央・総武線沿いの三鷹にお住まいだとしましょう。新宿から帰る場合、まずは総武線各駅電車に乗っていただき、もし大久保から東中野に向かう途中でパニック発作が出た場合は、東中野で降りていただき、抗不安薬を飲んで落ち着かせます。

このようにして各駅停車で休みながら三鷹まで帰れるようになったら、今度は中央線快速で新宿から中野までノンストップで行って、後は各駅停車で帰る、それも大丈夫そうなら仕上げは中央線特快で中野から三鷹まで一気に帰る、といったステップ方式です。

もし人間のこころが、刺激→反応、という単純なダイアグラムで表すことができるならば、誤った反応(症状)を学習しながら是正できるような行動療法をそれぞれの病気に対して作れば良いということになりますが、こころはそう簡単な反応系ではないようで、それがこのメンタルヘルス疾患の治療を奥深くしているのだと思います。