こころの病気の福祉制度

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クリニックに通う必要性とは」のページで心療内科なメンタルクリニックにはどうしても一定期間通院する必要があることを書きました。そこで気になるのは、やはりお金の問題ですよね。

私たちのクリニックを通常の3割負担で受診すると、初診で3,300円前後、再診(2回目以降)では1,500円前後の負担が生じます。また、採血や心理検査を行なった場合、あるいは診断書を作成してもらった場合には別途費用がかかります。

これに加えて薬局での薬代がかかるため、1回の受診で少なくとも3,500円くらいかかってしまいます。病状にもよりますが、最初の段階では2週間に1回来院していただくことが多いため、月7,000円くらいの出費になると、通院を躊躇われる方も多いと思います。

そこで今回は、医療費の負担を軽減する制度を5つご案内したいと思います。

(1)自立支援制度

保険診療の3割負担が原則1割になる制度です。クリニックと薬局を指定して同じところに継続して通うことを前提として、負担が軽減されます。所得水準によって上限額が決まっていて、それ以内であれば、1割負担が維持されます。基本的にはお住まいの市区町村の役所に診断書と必要書類を提出します。

受給者証が発行されるまで2ヶ月くらいかかりますので、その間は診断書の控えをクリニック・薬局に提示するのを忘れないようにしてください。

有効期間は原則1年ですが、期限の切れる3ヶ月以内に市区町村の役所に更新手続きをしていただきますと、さらにもう1年期限が延長されます。(つまり、医師から診断書を書いてもらうのは、2年に1回で済みます。)

ここはちょっとトリッキーで手続きを忘れてしまい、毎年診断書を書いてもらう方もいらっしゃいますのでお気をつけください!

(2)障がい者保健福祉手帳

初診から半年以上継続して受診していれば、取得資格があります。クリニックを変えても同じ病気(例えばうつ病)で受診しているならば、以前のクリニックの初診日から起算して半年以上経過していれば申請可能です。診断書はお住まいの市区町村の役所に提出します。

1級から3級まで等級があり、1級が最も重度(日常生活を送るために常時他者の支援を要する)、3級が最も軽度(日常生活で時に他者の支援を要する)となります。場合によっては審査で非該当となることもあります。

また、等級に応じて所得税や住民税の減免や、都営バス・都営地下鉄の無料化などのサービスがあります。東京都では『道しるべ』という冊子(市区町村の役所やサービスセンターなどで入手できます)に詳しく書かれていますので、ご参考になさってください。

発達障害や身体表現性障害など非精神病圏の患者様の場合、東京都では手帳用診断書と自立支援を同時に申請する場合、意見書を別に添えることがあります。意見書を出すかどうかは病名によって決まるため、詳しくは主治医にご相談ください。

なお、手帳の有効期間は2年となっています。

(3)障害年金(基礎・厚生)

初診から1年半以上、通院あるいは入院を継続している方に、障害年金が支給されることがあります。

年金は互助制度ですので、ご自身も年金を支払っていることが支給の前提になります。手帳制度と同じく、等級は1~3級あって(非該当もありえます)、等級ごとに支給額が異なります。

重要なのは、初診時に国民(基礎)年金を払っていたか(自営業など)、厚生年金を払っていたか(会社員や公務員など)を証明することです。なぜなら、初診時に厚生年金を払っていた場合、基礎の障害年金額に上乗せ加算があるからです。

初診の証明を取るには、受診したクリニックにその証明書を書いてもらうのが一般的ですが、5年以上前だとカルテ保存されていないこともあるため、初診時の領収書などで代用することもあります。(領収書の保存って、こんなところでも大切なんですね。)

障害年金制度は複雑で、患者様ご自身に揃えていただく資料も多いため(年金を前倒しでもらえる制度ですので、証明する事項が多くなるためです)、お近くの年金事務所に予約を取ってよく説明をお受けください。

なお、障害年金の受給期間は審査によって年数が異なりますので、更新する場合には年金診断書の提出を忘れないようにしましょう。

(4)高額療養費制度

クリニックや薬局で払う医療費が年齢・所得に応じて決められた限度額を超えた場合、超えた金額が後になって払い戻される制度です。外来のみで該当するケースは少ないかと思いますが、詳しくは加入している保健組合(健康保険組合または市区町村)にご相談ください。

(5)確定申告による医療費控除

生計を一にする家族の医療費が年間で10万以上になった場合、確定申告によって所得から医療費を差し引くことで、所得税額を少なくすることができます。自宅からクリニック・薬局までの公共交通費(電車・バス)も申請できます。

会社員の方でも医療費控除は年末調整ではできず、翌年の2~3月の期間に確定申告する必要がありますので、ご注意ください。

いかがでしたでしょうか?今回は長くなりましたが、大切なお金の話でしたので、少しでもお役に立ちますと幸いです。

私も医者になってから実務を通して知った制度がたくさんありましたが、日本は公的福祉がよく整った国なのではないかと思います。皆様の大切な税金や年金が、困っている誰かを助けていると考えられるようになると、社会に対する見方も少し変わるかもしれませんね。

なお、それぞれの制度は地域により提出書類が異なる場合がありますので、疑問点はお住まいの各担当部署(市区町村、年金事務所、健康保健組合、税務署など)にお問合せくださいますと幸いです。